お客様を迎えるときや挨拶をするときなど、身を正すような場面ではスーツのボタンは留めるものですよね。スーツは、立ってボタンを留めた状態でサイズがピッタリになるよう作られていますから、ボタンを留めて初めて、全体のシルエットが映えてきます。このボタンの留め方は上着の開きによって違います、ご存知の方も多いとは思いますが、マナーのひとつとして改めて確認して頂きたいと思います。まず、上着の一番下のボタンは常に外しておきましょう。3ピースのスーツにも「アンボタンマナー」という言葉があって、ベストも一番下のボタンは留めないのがマナーとされています、ですから、シングル・2つボタンの上着の場合、上のボタンのみを留めるのが正しいボタンの留め方になります。
「おしゃれ上手」のお手本を持つ。例えばローレン・ハットン外国の女優でおしゃれな人は、何といってもローレン・ハットン。『ヘカテ』に出た人だ。ダイアン・キートンもとてもおしゃれな人だと思うけれど、ローレン・ハットンにはかなわない。モデル出身というスタイルの良さがもちろんものをいうのだが、何といったらいいのかな、のびやかなのだ。メイクも自然だ。何を着ても自分のものにしてしまう。ロングヘアでもショートにしても風が通り抜けているような揺れたイメージ。残念なことに『ヘカテ』とリチャード・ギアと共演の『アメリカン・ジゴロ』の二本しか知らない。(『ウエディング』というコメディにも出ていたがこれはお話にならない)。『ヘカテ』はあまり好きな映画ではなかったけれど、ローレン・ハットンは素敵だった。最初に彼女を見たのは『チープ・シック』というアメリカのファッション書籍だった。まだ若い(ここで『チープ・シック』を探したが見つからない。昔の本だもの)ローレン・ハットンは(良かった、本が出てきたわ)、まん中分けの自然なヘアスタイルは肩までの長さ、白いシャツ、袖口が少し伸びたジェットランドセーターを肩にかけ、着込んだジーンズ、手にツイードのジャケットを持っている。よくある何でもないスタイル、といえばそれまでだが、アクの強い七〇年代ファッションの中で、いかにも自然で品があって、現在にも通用する永遠の素敵さがある。それはこの人の持つ着こなしの特徴なのだ。
「二着一九八〇〇円」の量販スーツもある。ある営業マンは、道具として戦略的にこの種のスーツを着る。彼は、「客よりいいスーツを着ていてはモノが売れない」と言って、営業用戦闘服として見るからに安そうなぺらぺら量販スーツを意図的に選ぶ。この成績優秀な営業マンは、プライベートのパッチでは一着十五万円のイタリアン・ブランドのタグがついたスーツを着る。量販スーツとはいえ、吟味して丁寧に着こなしている人々も少なくない。現代において、男性のスーツ文化はかくも豊かである。しかるに、それを着る男たちは、それぞれのスーツに対する思い入れやこだわり、あるいは戦略の程度にかかわらず、「地球上の衣服文化」という観点からみれば、なべて、「とりあえず、スーツを着ています」というところで同一線上に並んでしまう。現実のスーツの世界を詳らかに見れば、スーツには無限のバリエーションが存在するのは明らかである。さらに、短い時間軸の中だけで見ても、年々スーツの「流行」は変わり続けている(ある服飾評論家の男性は、「三年前のスーツは、体型が変わらなくてもシルエットに強い違和感でもう着られない」と言っていた)。それなのに、人類の長い服飾史全体からスーツを俯瞰すれば、「百五十年間変わらぬ形を保ち続けている服」ということになってしまう。